空港閉鎖の危機を乗り越えて添乗員に伝えられた愛の告白?〔前編〕

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投稿日:2018-11-11 更新日:

添乗に出るといろいろなことに遭遇します。

ただ、トラブルがなかったツアーはあまり記憶に残りませんので、トラブルが印象に残ったツアーの思い出がそのまま添乗員としての思い出かもしれません。

とは言え、後で思い返すと良い思い出ですが、そのときは、その状況から抜け出すために必死でした。

今回の記事はHaruがご案内いたします。

私が同行したツアー

ツアーの形で対応が異なる添乗員の対応

添乗員が同行するツアーは、そのツアーの「成り立ち」によって対応も違ってきます。

旅行会社が企画・主催して一般に参加者を募集するツアーだけでなく、様々な団体が主催してその旅程の管理だけを旅行会社が任されるツアーもありますし、最初から参加者が決まっていて完全に手配だけを任され、その「お世話係」としてツアーに同行するケース等もあります。

旅行会社主催のツアーの特質

「旅行という商品」は「製品の販売」の様にある程度予め商品の内容・品質が確定した状態で引き渡しされるわけではありません。

「この様にする予定です」という「約束」だけでお金を事前に頂きます。

そして旅行の実施が終わって初めて商品の内容や品質が確定するという性質があります。

お客様はツアーパンフレットに書かれたサービスを受けられることを期待して同じ旅行代金を支払って参加しますが、期待する比重はまちまちだったりします。

ある人はショッピングが重要であったり、食事だけは美味しい料理が食べたい、観光そのものが充実していればショッピングの時間を削っても良いくらいだ、いろいろな方が参加しますので、参加者のカラーをある程度理解しつつ、どのようなお客様にも不公平感を感じさせない程度のさじ加減も重要な添乗員の現地での対応のポイントです。

手配旅行というジャンル

そういった、「見ず知らずのお客様が成田空港で一堂に会する」主催ツアーとは逆に「旧知のグループのツアー」に同行するということも大変多くありました。

旅行会社は手配を請け負う役回りとなります。

ある程度、各個人の意見集約などをリーダーの方にお任せできる点では添乗員がやりやすいとツアー形式と言えます。

ただし、リーダーの気質にも大きく左右されます。

特に責任感が強すぎるとツアーの良否について敏感過ぎて一挙手一投足に口出しされて面倒な場合も生じます。

和気あいあいの素敵な手配旅行に同行

そのツアーはあるリーダーの方が、お知り合いの方に声を掛けて組織したツアーでした。

旅行仲間が集まったグループで東北地方の高齢者の方々が中国をゆったりと観光する、そんなツアーだっと記憶しています。

参加者それぞれがほとんどお知り合い同士ですから、ツアー開始時から和気藹々としていて人数も20名程度と、添乗員としては比較的落ち着いて取り組めるツアーです。

私がまだ駆け出しの頃で、あまり難しいツアーを一人で任せるわけにはいけないという配慮があったのだと思います。

リーダーの方はリーダーシップを持ったしっかりした方で、決めたことはメンバーに周知することも徹底され、添乗員サイドも安心できるグループでした。

添乗員に無理難題を押し付けるようなこともなくツアーは順調でした。

トラブル発生!

早朝に入った一本の電話

さて、順調に進んだ日程でしたが、ある日の早朝にホテルの私の部屋にお客様から電話がありました。

添乗員の部屋への電話は様々です。

「お風呂のお湯がでない」「トイレの水が流れない」「スーツケースのダイヤルロックの番号を忘れてしまった」、「部屋で飲んでるから一緒に飲もう」 etc.

私にとっては早朝から電話は珍しいことでした。

ご高齢の方が多いので、大抵のお客様は早起きです。

ですから、中には「今日はどこへ観光に行くんですか?」、とか「散歩に行きたいのですが?」なんていうこともあるのですが、その時の電話はそれほどのどかなものではありませんでした。

電話の向こうからの声

「は、はるさん… ちょっと来てくれますか…」

ご高齢の女性のお客様だったのですが、明らかに声が苦しそうです。

「どうしましたか?鈴木さん?」

私が電話口で声を掛けると、

「朝からお腹が痛くて…、苦しいんです。」

私は、とにかく様子を確認することにしました。

「わかりました!すぐお部屋に参りますので、待っていてもらえますか?」

部屋に伺ってみると

トラブルに発展しそうな出来事が起きても、同室のお客様に遠慮する方もいます。

今回のお客様も早朝のせいもあり同室の方には声を掛けずに私に電話をしてきたようです。

同室の方は電話をしている声で目を覚ましたようで、私がお部屋について呼び鈴を押すと同室の方がドアを開けてくれました。

お部屋に入ってご本人の様子を見てみるとかなり苦しそうな感じでした。

同室の方に昨日からの様子を聞くと、昨日までは特に変わったところがなかったということです。

まずは診療が必要と判断

私は病気の見立てまではできませんので、ホテルのフロントに電話をして、お医者さんを呼んでもらうように頼みました。

ツアーリーダーの方にも状況を電話で連絡を入れると、心配そうに部屋にやってきました。

さて、ちょうどそんなやりとりをしているところに、現地のガイドさんがやってきました。

中国のガイドさんは朝ご飯をホテルのレストランでとる場合があります。

都の時の彼も朝食をホテルで摂るため、集合時間よりも大分早めにきてくれて、本当に助かりました。

彼に事情を説明すると、

「すぐ病院に連れて行きましょう。」

ということになりました。

こういう時に現地ガイドさんがいるのといないのでは心強さは全然違います。

ツアーリーダーの決断

ツアーリーダーの方に説明すると、

「とにかく病人優先。ツアーメンバーはホテルに待機しているから、よろしく頼む。」

ということでした。

こういうとき、『手配旅行』は話が進めやすいです。

これが一般募集のツアーであれば、一般のお客様のお世話もしながらトラブル対応もしなければなりません。

ガイドと添乗員が手分けしてことに当たらなければならなかったりして難しい対応を迫られます。

病院への搬送、そして驚愕の一言

とりあえず一般のメンバーはツアーリーダーの方にお任せして、私とガイドさんでそのお客様を病院へお連れすることになりました。

人って重い

私がロビーまでおんぶして行くことにしたのですが、ぐったりしている「人」って重いんですよね。

酔っ払いのお世話をしたことある人は体験あるかもしれませんが、体を完全に預けられちゃうと人って重くなるんですよね。

ちょっとよろよろしながら、ホテルからタクシーに乗せて近くの病院へ行きました。

驚愕の病院の診察結果

ガイドさんが急患扱いで頼んでくれたようで、すぐに診察してもらえました。

中国語が話せない私の代わりに、そのお医者さんに朝からの状況を説明してもらいました。

お医者さんから診察結果を聞いたガイドさんは、私の方に向き直り、

「空港を閉鎖しなければならない事態になるかもしれない…」

なんていきなり物騒なことを言います。

私は、

「え?どういうことですか?」

と、状況が飲み込めず聞き返しました。

するとガイドさんは、

「どうも、伝染病にかかったらしいんです。症状が似ているらしいんですが…。ええと…、ええと、サラリ、サラリって知ってますか?もしこれにかかっていたら、空港閉鎖になるかもしれないよ。」

いまいち要領を得ない返事ですが、「空港閉鎖」を繰り返します。

「ええ?サラリ?聞いたことないなぁ。日本語で何て言うの?」

ガイドさんはもどかしそうに、

「ええと。サラリ…セロリ…。」

と言うばかりです。

なんか、『喉まで出かかっているんだけど』って、感じで思い出そうとしてますが、出てこないようです。

急展開でパニックになる添乗員

ガイドさんは言葉を思い出すのは諦めたようで、

「とりあえず、病名は辞書で調べますが、とにかくお医者さんがここでは詳しく調べらないから、すぐに『伝染病病院』に行って欲しいって言ってます。どうしますか?」

と私に尋ねてきました。

「えぇぇ!伝染病病院!そんなすごい病気なわけ!どうしますも何も行くしかないでしょう?」

私は病院に来られて一安心していたので意外な展開に軽いパニック状態です。

「じゃぁ、病院が救急車で運んでくれるそうですからすぐに行きましょう。」

「わかりました。じゃぁすぐに。」

更なる驚愕の淵へ

私もお客様の具合が悪くなることは時々経験していましたが、伝染病病院に行くなんて経験は初めてでした。

そこには万里の長城があった

今度は病院で車いすも用意してくれたので、おんぶはしなくて済みましたが、いきなり異国で救急車に乗ることになってしまいました。

伝染病病院に着くと、すぐに受付をしました。

ガイドさんが何やら説明を聞いていて、とにかく専門の先生が診てくれるから2階の診察室に運んでくれとのとことです。

救急車は受付が済むと何やら申し送りみたいなのを簡単に済ますと帰って行ってしまい、私たちが運ばなければなりません。

その間もお客様はうーん、うーんと唸っており、朝の様子より更に苦しそうです。

ガイドさんと2階に上がろうとエレベータを探しましたが良くわからず、通りがかりの看護婦さんに尋ねると、この病院には階段しかないとのこと。

暗い廊下の先にある階段が、万里の長城のようにそびえます。

小柄な私よりはるかにがっしりした体格のガイドさんにねだるような視線を送ると、彼がおんぶをしてくれました。

2階に上がって私が運んだ車いすにお客様を乗せると、ガイドさんはかなりぜいぜいしていました。

声を出すのが辛そうです。

空港閉鎖の理由はこれだったのか!

きりっとしたベテランの女医さんがいらして診察をしてくれました。

とりあえず診察中はガイドさんと二人で廊下で待っていたのですが、さっきの空港閉鎖のことが気になって聞いてみました。

「思い出しました?さっきの病名?」

「あ、そう、さっき思い出した。コレラって言うでしょ?」

「えーーーーーーー!」

私、あごがはずれそうになりました。

だって、私、思い切りおんぶしてますし…。

コレラって経口感染が主で空気感染や接触感染はほとんどしないようですが、そんな知識がなんてありませんから、またパニックです。

「そんな…。こんなオープンな雰囲気のところで診察してて大丈夫なんですか?」

本当は、自分が感染しないか聞きたかったけど、我慢してそんな聞き方をしたと思います。

「わからないよ。でももしコレラってことだったら、たぶん帰国は無理だよ。ホテルの部屋とか入れなくなるね。」

「…。」

私は朝からの緊急事態の疲れも出たせいか、なんだか急に調子が悪くなってきました。

そんな会話をしていると診察室で先生に呼ばれてガイドさんが説明を聞くことになりました。

ベテラン女医さんの診察結果は?

どうもコレラという線はないようでした。

ただ他の伝染病が疑われるから検査結果が出るまでとりあえず、隔離病棟へ入院をしてもらうことになるとのことです。

「隔離病棟…」

大変なことになったな…。

血液を採取したりいろいろされた後、とりあえず病室へ案内されました。

もう、感染について今更気にしてもしょうがないやって感じで、どこでもついて行きました。

お客様が患者さんに変わる

落ち着きを取り戻す鈴木さん

ベッドに横たわるとお客様はだいぶ落ち着いた様子です。

特に治療をしたわけではないのですが、女医さんの雰囲気が優しい感じで、安心されたのではないかと思います。

とりあえず、検査結果が出るまでここで休んでもらうことをお伝えしました。

「すみませんねぇ。ホントにご迷惑を。」

年配の方ってこういう時にみなさん、大抵、お詫びの言葉を口にされます。

とても辛いでしょうに、他人を気遣うってすごいなぁって思います。

とにかく、私の「ツアーのお客様」は「伝染病が疑われる患者さん」になりました。

とりあえず先生に安静にしていれば心配がないかどうかを確認してもらいました。

急展開はなさそうでしたので、私たちはいったんホテルに戻ってツアーの今後のことを検討することにしました。

ツアーの今後の検討

しかしながら、お客様は言葉のわからない異国の病院で一人になることが心細そうでした。

そりゃぁ、そうですよね。

ツアーのことも心配でしたが、一人で心細いお客様を残していくわけにもいかず…。

普通は逆だとも思うのですが、何故か、私が病院に残って、ガイドさんにホテルに戻ってツアーリーダーに状況説明をしてもらうことにしました。

私はパニックの上、疲労により判断力が無くなっていたのかもしれません。

ガイドさんには、とりあえずこちらの状況が落ち着くまで、ホテル周辺にいてもらうなどして、午前中の観光はひとまず自由行動か何かにするように段取りしてくれるように頼みました。

病人の付き添い初体験

さてガイドさんが行ってしまうと、特にやることもありません。

お客様は落ち着いてきて少し話をする余裕が出てきたようで、しきりにみんなに迷惑をかけて申し訳ないと詫びております。

私は安心してもらうように話しかけるくらいしかできないと、ベッドサイドでいろいろ話しかけることにしました。

「検査を受けて心配なければすぐに帰れると思いますが、ちょっと辛抱してください。」

「心配ないですよ。ここは専門病院ですからすぐに良くなると思いますよ。」

「痛くないですか?」

お客様は弱々しい声ではありましたが、朝のパニック状態からだいぶ落ち着きを取り戻して、

「大丈夫です。」とか、

「本当にご迷惑をおかけして。」とか、

そんなことをお話しされていたと思います。

そんな感じで過ごしていると、さっきの女医さんが私を呼びに来て検査結果を説明したいということです。

(やっぱり、私がホテルへ行けば良かった…)

筆談で病気を語らう

普段ですら言葉が通じなくて苦労するのに、診断結果を聞くなんて専門的なことは私には荷が重すぎます。

そうは言っても中国は漢字の国ですから、筆談という手があります。

先生と筆談が始まりました。

先生が書いた字は、「赤痢」でした。

私は赤痢って言葉は聞いたことがありますし伝染病であることは知っていましたが、どのくらいの病気か今一つピンと来ませんでした。


赤痢(せきり)は、下痢・発熱・血便・腹痛などをともなう大腸感染症である。 俳句では夏の季語として扱われる。古称は血屎(ちくそ)。従来、赤痢と呼ばれていたものは、現代では細菌性赤痢とアメーバ性赤痢に分けられ、一般的に赤痢と呼ばれているものは赤痢菌による細菌性赤痢のことを指す。

私は治療とか退院とかの文字を書いて、いつになるかを尋ねてみました。

「不明」という文字とともに「1週間」という文字も書かれたので、

「はっきりは分からないが、1週間程度は退院にかかりそうだ。」

と理解しました。

どうなる?このツアー

帰国予定は明後日です。

どうなってしまうんだろう…。

とにかく、容態が急変して命に別条があるような重大な状態ではないようですので少し安心しました。

一通り説明を聞いて(書いてもらって)、また病室に戻りました。

とりあえず今後のことはガイドさんが戻ってきてからだということで彼を待つことにしました。

病室に戻るとお客様はスースーと寝息をたてて、眠っていらっしゃいました。

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-添乗員こぼれ話

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