前回の記事では、東北大震災後に発病して絶望的な血管の詰まっている脳の画像を前に、次から次へと妻の入院初期の状況をお伝えしました。
今回は、その後の入院の模様についてご紹介したいと思います。
入院後の経過は?
予断を許さない状況ではあったものの『血液をサラサラにする薬』の点滴により頭痛も軽くなり経過は順調でした。
血液の濃度を安定させるのは難しいらしいのですが、(サラサラになり過ぎるとそれはそれで危ないんですね)徐々に目指す濃度に向かっているようです。
意外にのどかな入院生活
脳の病気で入院なんていうと『闘病生活』って感じですが、妻の場合はもっと「のどか」でした。
点滴をしているので自由が効かないのは不便だったとは思いますが、それも1日中ずっとしているわけではありません。
綺麗な病室で快適な環境でした。
和食が美味しい病院食
食事も和食中心で美味しそうでした。
見舞いに行くと和食好きの娘は、妻の残した夕食などを楽しみに食べていました。
ちなみにこの話の面白い後日談があります。
優しい病院スタッフの方々
看護士さんもとても皆さん感じが良くて気持ちいいです。
最初の検査から主治医になって下さった丸山先生(仮名)は明るい人で、私たちは密かに「丸山ちゃん」と呼んで慕っていました。(笑)
脳静脈血栓症という病気の治療法
さて、入院生活はそんな感じで深刻な感じは微塵も感じられなかったのですが、丸山ちゃんと治療方針についてのお話を聞くとそれほど楽観できない状況です。
『脳静脈血栓症』という病気の治療法は、とにかく血液の流れを正常に戻すことです。
そうしないとどんどん脳に血液が溜まって、いずれは破裂してしまいます。
血管のバイパスは自力で作られる
これは、この時に初めて知ってびっくりしたのですが、一番太い静脈が詰まっても細い細~い血管を通って何とかして血流を維持しようとするそうです。
場合によっては毛細血管から新しい『血の道』を自力で作っていく『バイパス造り』の手助けをしたり既存の細い血管を太くして「ダメになってしまった幹線道路の代わり」に新しい幹線道路にしてしまう、というのが治療の考え方です。
血液サラサラ・ワーファリン
脳こうそくなどを経験した方は馴染みのこの「血液サラサラ薬」は『ワーファリン』と言います。
妻もこの薬を投与されていました。
バルーンカテーテル手術
ワーファリン投薬はどちらかというと自然治癒的な治療ですが、血流の回復を人工的にやる方法がカテーテルによる治療法です。
血管にワイヤーを入れ強制的に血管を広げたり、バルーンカテーテルと言われる「風船を膨らませるようにして」血管を広げる方法です。
更に血栓(血が詰まっているところ)にカテーテルを入れて血栓を破壊する方法もあるようです。
原因不明で治療方針が定まらない
丸山ちゃんがなかなか治療方針の決定をできないのは、そもそも血栓が起こった原因がわからない点でした。
難航する血栓の原因特定
ワーファリンによる血流の安定化と裏腹に、この原因特定は難航しました。
原因が特定できないままワーファリンなどの投与によりバイパス血管が育って、通常の生活ができるように回復してしまう人もたくさんいるようです。
原因が特定できなくても回復も望める状況でしたが、やはり再発や合併症などの心配からは、1日も早く原因がわかって欲しいと願っていました。
検査ラッシュ
それからは、たくさんの検査をしました。
妻が特に辛いと言っていたのは、カテーテルによる造影検査でした。
『熱痛い』カテーテルによる造影検査
カテーテルによる造影検査はMRIよりも更に血管や血流の状況が把握できる方法です。
太ももなどの血管に穴をあけて、そこから液を注入して血管の状況が写りやすくするというものです。
これをやると顔面の血管などにその液が通るのがよくわかるそうです。
妻の表現を借りると『熱痛い(アツイタい)』そうです。
特に目の周りの血管を駆け巡るとき、痛みが酷いそうです。
5時間くらい同じ姿勢で身動き取れない状態が続くので、それもかなり辛いようです。
しかも、カテーテルを抜くとワーファリンで血流をサラサラにしているため出血がなかなか止まりません。
止血のため30分ぐらいカテーテルを挿入したところを強く圧迫するので痛みを伴います。
一つずつ消えていく可能性
その他にもいろいろな検査をして、一つずつ可能性のある原因をつぶしていくわけです。
丸山ちゃんから、
「原因のひとつとして脳腫瘍という可能性は否定できません」
と言われていましたが、ある検査をして脳腫瘍の可能性が否定されました。
この時はとてもホッとしました。
最後に残ったシェーグレン症候群
そして、どれも「シロ」として可能性が潰されていく中で残ったのが、
『シェーグレン症候群』
というものでした。
聞いたこともない病名です。
シェーグレン症候群とはこんな病気
またも、ネットで調べまくりました。
シェーグレン症候群・その症状
自己免疫疾患で、涙が出にくくなるとか、唾液が出にくくなるとか、いろいろと症状があるそうです。
血栓の原因となることも症状の一つと言えます。
シェーグレン症候群・なりやすい傾向は?
発症例の男女比が1:14ということで、特に40~60歳の中年女性に多く発症する病気だということです。
妻も「どストライク」です。
シェーグレン症候群は治療法が確立されていない難病
この『シェーグレン症候群』は、症状によってはそんなに深刻でないこともあるようですが、基本的に治療法が見つかっていない難病認定されている病気らしいことがわかりました。
もし、この病気に立ち向かわなければならない方がいたら、「インチキ治療法」もあるようですので、信頼できる先生を必ず探されることをお勧めします。
シェーグレン症候群は血栓治療の今後に大きな影響を及ぼす
私の妻がもしこの病気が原因で血栓ができたとすると、かなり深刻です。
治療法が見つからないまま、この先この病気による再発を恐れて過ごさなければならないからです。
シェーグレン症候群を徹底的に検査した結果
今までの検査では、この病気の可能性の排除ができませんでした。
そこでこの病気の可能性に絞って検査するために、口腔外科の先生など他科の先生も協力してもらって徹底的に検査してもらいました。
結果は…
『シロ』でした。
正直、ホッとしました。
治療方針の決定
丸山ちゃんもこの検査でシェーグレン症候群の線も消え、「原因不明」のまま治療を続けることにされたようです。
基本的に薬の投与で血流は良好に回復の方向に向かっていますので、このまま継続し経過を観察することになりました。
定期的にMRI、場合によっては、妻の嫌いなカテーテル造影検査で精密検査で経過確認をする方向で治療をすることを告げられました。
治療方針に安堵した
私は嬉しかったです。
あの絶望的に詰まってしまった血管の写真を見て以来、最悪、頭蓋骨を開いて手術することを覚悟していたからです。
妻の頭が開かれてしまう、なんて考えたらたまらない気持ちだったからです。
私は、『血液よ!元気に流れてくれ!』と祈るような気持ちでした。
流れる病室の「のどかな空気」
でも、病室のベッドでは、もっとのどかな空気が流れていました。
妻の不満といえば…
同部屋のおばあちゃんが病人の妻にラジオやテレビの具合を直してくれと頼んできたり、
大音量でテレビを観出したり、
寒いのに窓を開け放って風邪をひきそうになったり、
することでした。
妻はこれらのことから「早く家に帰りたい」と言ってました。
毎日、入院生活している妻にとって、それは大事な問題だったと思います。
でも「妻の頭が開かれている図」を想像しては「ぞっとしていた」私にとっては、その程度のことだったら、「幸せな悩みだ」って、今の状況をありがたく感じていました。