『慢性血栓塞栓性肺高血圧症 CTEPH(シーテフ)とは?』専門サイトの理解の一助としてお役立て下さい

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投稿日:2018-10-15 更新日:

妻が「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を発症してブログに記事を掲載してきました。

ブログの移転をすることになったのですが、過去記事をリライトするなかで病気の説明をするページを別個に設けた方が説明しやすいと感じました。

そこで、今回新たに病気の説明をできるだけ平易な文章で専門用語が出てきたらそれも合わせて説明して突然この病気を調べなければならない方にも役立つようなページを目指して作成してみました。

病気理解の助けになると幸いです。

執筆者からのお願い
この記事は医療従事者ではない執筆者が記載しておりますが、信頼できる情報に基づいて細心の注意を払って記述しております。また治療法ではなく病気そのものの解説に留めておりますので、経年による記載事項の陳腐化は比較的少ないと思われます。しかしながら、この記事では読まれた方がこの記事で病気について理解を深めつつ最新の状況については専門機関での情報収集をされることを前提としております。当記事は下記サイトを参考にしております。できましたら、当記事を読む前にこれらのサイトで最新の情報を確認されることをお勧めします。そのうえで網羅的に理解を深めたい、専門的でわかりにくかった、等の場合には理解の一助としてご利用頂けたら幸いです。

原因は血液の循環を阻害すること

「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」

この長い病名は、血液の流れが悪くなることが原因で引き起こしている病気であることを良く表しています。

まずは血液の流れの阻害要因についてお伝えします。

血栓症とは?

人は肺から取り込んだ酸素を血液で循環させることによって全身に必要な酸素を供給して健康な生活を送ることができます。

しかし血液の循環を阻害する要因があると、この「酸素を全身に供給する仕組み」が機能しなくなります。

この阻害要因が一つが「血栓症」です。

「血栓症」とは何らかの理由で血管の中に「血の固まり(血栓)」ができて血流が悪化した症状を指します。

塞栓症とは?

「塞栓症」とは「血栓」が発生箇所で留まっていたものが一部剥がれて血管を通して遠くに運ばれて、血管のある箇所で留まり血流が悪化した症状を指します。

足の血管内でできた血栓が肺まで運ばれて肺の血管で留まってしまい、肺の血管の流れを悪くする、といったものが塞栓症の一例です。

血栓塞栓性肺高血圧症とは肺動脈が塞栓症になること

血栓塞栓性肺高血圧症とは肺動脈に塞栓の状態が起きて肺動脈の血流が著しく悪くなることにより起きる病気です。

まずは「肺動脈とは一体何か?」というところから解説していきます。

肺動脈の位置づけを知るには血液の循環のメカニズムを知るのが早道です。

動画で見る血液の循環のメカニズム

とても分かりやすい動画がありましたので、まずはこの動画をご覧下さい。

約2分半の動画ですが、「2:00」あたりからは動脈硬化についての説明になってますので飛ばしても差し支えありません。

まずはこの画像で血液の循環の大まかな状況はわかるかと思います。


出展:秋田大学提供/資料篇~人体のふしぎ~(9)循環器・血管


出展:秋田大学提供/資料篇~人体のふしぎ~(9)循環器・血管

見にくい方は画像をクリックして拡大画像をご覧下さい。

肺動脈の詳細と発症した状態について

心臓をポンプ役として、全身と肺の2系統のルートを形成しているのが人の血管の循環メカニズムの基本です。

動脈・静脈という言葉は、「心臓を起点として」往路が動脈、復路が静脈という呼び名になっています。

※動脈はきれいな血液が通る道、静脈は使い古された血液が通る道というのは大動脈・大静脈に限定した考え方です。あくまでも心臓から発進しているのが戻ってくるのかが重要です。

図でもわかる通り、「 心臓 ⇒ 肺 」の通り道、それが「肺動脈」です。

血栓塞栓性肺高血圧症はこの肺動脈に血栓が留まり、『塞栓』状態になり、心臓から肺への血流が著しく低下した状態を原因として発症する病気です。

ただし、上の図からは心臓から肺に至る太い血管だけが「肺動脈」のように見えますが、肺の中を通る、更に細い血管、毛細血管に至る細い血管も肺動脈であり、血栓が滞留、つまり塞栓するのは肺の中に入った肺動脈であることがほとんどです。

後述する「症状の進行」の項目で出てくる「肺小動脈」という図解を参考にして下さい。

肺高血圧症とは

肺動脈血栓症とか、肺動脈塞栓症ではなく、「肺高血圧症」と呼ばれるのは何故でしょうか?

肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)のメカニズム

肺高血圧症はその名の通り、「肺の血管が高血圧」になることを言います。

「高血圧」とは血管の中の圧力が高まること。

水撒きホースの先端を押しつぶすとホース内部の圧力が高まりホースがパンパンになった状態を思い浮かべて下さい。

出口が細い管に沢山の液体を通そうとするパンパンになる、これが「高血圧」な状態です。

肺高血圧症の定義

高血圧症は「安静仰臥位での平均肺動脈圧が25mmHg以上」と定義されています。

※「仰臥位(ぎょうがい)」とは「上を向いて寝た姿」のことです。つまり安静に寝た状態で測った数値ということです。

先ほど「肺の血管が高血圧」としましたが、特に肺動脈が高血圧な状態を肺高血圧症と定義しています。

肺高血圧症の症状

出展:秋田大学提供/資料篇~人体のふしぎ~(9)循環器・血管

先ほどの動画でも説明がある通り、肺は全身から心臓に戻ってきた酸素が減少した血液を再度全身に酸素が供給できるように「血液に酸素を送り込む」ことを役目としています。

全身に必要な酸素を供給するためには、心臓から出る血液の量を一定以上に保つ必要があります。

肺高血圧の状態では、血液の流れが悪くならないように、狭い血管を無理に血液が流れるように心臓が努力することで、肺動脈圧が上昇します。

肺動脈圧の上昇が持続すると、肺動脈の壁自体に高い圧がかかり続けることで、肺動脈が傷み、さらに肺動脈が狭くなったり、硬くなったりすることで、肺動脈圧がさらに高くなるという悪循環に陥ります。

また心臓(特に右心室)に負担がかかることで、次第に心臓の働きが悪くなり、右心不全(心臓の右心房を含めた心臓の右側の不全状態)を引き起こします。

下の図はこの血栓発生による血流の悪化から、右心不全に至るメカニズムを表しています。

心臓から肺に至る「太い血管」の流れの悪化が原因ではなく、その先の肺の中にある細い血管の中の血液の流れの悪化が肺動脈の「高血圧化」を引き起こしていることがわかります。

肺高血圧症の進行と具体的な症状

    肺高血圧症の初期症状では、

  • 動いたときに息切れがする
  • 疲れやすい
  • 胸痛や動悸がする
  • 等の症状が現れ、特に息切れをきっかけにして病院を訪れる方が多いようです。

    肺高血圧症の初期症状が進行した状態になると、

  • 失神発作を起こす
  • 声がかすれる
  • 咳が止まらなくなる
  • 血痰が出る
  • 等の症状が現れることがあります。

    右心室が拡張して働きが悪くなると全身のうっ血が起こり結果として、

  • 食欲不振
  • 顔面や下肢のむくみが生じる
  • 肝臓が大きくなり右上腹部が痛む
  • 黄疸なる
  • 等の症状が現れます。

    肺高血圧が高度になり右心不全にいたると、

  • 息切れは極軽い労作でも起きるほどに悪化
  • 立ち上がるだけでも気を失いかける
  • お腹に水がたまる
  • チアノーゼ(低酸素血症では皮膚や粘膜が青みを帯びてくること)を起こす
  • 等の症状が現れます。

肺動脈や右心室に高い圧力がかかり、また拡張することから心臓の弁がきちんと閉まらなくなり逆流を生じるようになります。このような状態は血液の流れをさらに悪くし、病態を悪化させることになります。

5つに分類される肺高血圧症

高血圧症はその原因・病態別に5つに分類されています。

  • Group1. 肺動脈性肺高血圧症 (PAH)
  • Group2. 左心疾患に伴うPH
  • Group3. 肺疾患/低酸素血症に伴うPH
  • Group4. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
  • Group5. 詳細不明/多因子の機序によるPH

詳しくは以下のサイトにて確認できます。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)とは

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は肺高血圧症の分類のひとつ

ここまで見てきた通り、肺小動脈の血流の悪化から始まり、進行していくと右心不全、つまり心臓の機能低下を引き起こしてしまう病気が肺高血圧症です。

そして、その肺小動脈の血流の悪化を引き起こしている原因が塞栓、つまり血管のどこかで発生した血栓が肺小動脈に至って血流を悪化したことをきっかけにした肺高血圧症が、先述の分類「Group4.」である慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)なのです。

急性血栓塞栓性肺高血圧症との違い

急性血栓塞栓性肺高血圧症はエコノミークラス症候群として有名です。

飛行機のエコノミークラスでの旅行のように長時間狭い椅子に座ったままの状態等で足の血液の流れが悪くなり、大静脈(全身への酸素供給を終えた後の血液が全身から心臓に向かうための血管)の中に血栓ができることがあります。

飛行機が到着して歩行などをきっかけにこの血栓が足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し、肺小動脈で急激に血流を悪化させる症状をいいます。

まったく健康に問題ない人が突然、死に至るケースとして注目された病気です。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、このような一時的な発生ではなく慢性的に肺高血圧症が持続する状態を言います。

場合によっては急性を原因としたまま、血栓が血流を悪くした状態が続き慢性化することもある様です。

CTEPHについてのその他の事柄

この記事では病気の概要をお伝えするのが目的です。

症例も限られ原因の特定が難しく治療法も確立されていないなか、医療関係者の方々のご努力によりその技術は日進月歩です。

従ってこの記事では「経年による変化が著しい可能性のある分野」については簡単に触れ、基本的には専門医療機関のサイトのご紹介に留めたいと思います。

患者数について

患者数は以下のグラフのように推移しています。

「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班」による調査では、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の患者数は2,140名(2013年度)ということです。

大変症例が少なく、患者数が少なく原因の特定が難しい点が難病となっている一因です。

また、この病気の患者数数として特徴的なのが男女発症比率です。

「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班」による調査では、女性患者さんが男性患者さんの2倍以上です。加齢と共に発症は増え、70歳代がピークになっています。

検査方法と治療法について

検査・診断については以下のサイトが詳しく網羅的に紹介されています。こちらをご参照下さい。

治療方法についても同サイトが詳しく紹介されています。

日常生活の留意点について

  • 心身の安静が第一です。過度な活動は避けてください。
  • 食事は、塩分を控えてください。
  • 喫煙は病態を悪化させるので、必ず禁煙してください。
  • 感染の予防も大事です。インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種が進められています。
  • 妊娠・出産は禁忌とされています。
  • 心臓と肺への負担が大きい飛行機の利用や高地への旅行は、必ず主治医と相談してください。

医療費助成制度について

  1. 難病医療費助成制度/小児慢性特定疾病医療費助成制度
  2. 身体障害者手帳
  3. 自立支援医療(更生医療・育成医療)
  4. 障害年金

詳しくは出展となっている同サイトをご参照下さい。受けられる条件や窓口となっている機関の紹介などが支援制度ごとに記載されています。

受診について

リンク集に私が知っている範囲で、この病気の治療に積極的に関わる医療機関のサイトを掲載しております。

しかしながらそれはすべてを網羅しているわけではありません。

リンク集に掲載されていない医療機関でもこの病気について研究・治療をしているケースもたくさんあると思います。

あくまでも「その一部」であるということをご理解の上、ご活用頂ければと思います。

なお、この記事執筆にあたり、かなりの部分で参考にさせて頂いた国立研究開発法人国立循環器病研究センターの「肺高血圧症」のページの最後はこんな言葉で締めくくられています。

その言葉を転載し、お読みなっている方への言葉を添えて、この記事も締めくくりたいと思います。

最後に
当センターは、肺高血圧治療の長い歴史と良好な治療成績がある、全国でも有数の肺高血圧治療専門施設であり、日本全国から患者さんは受診しています。当センターへの受診希望がありましたら、紹介や受診していただければ、最先端の診断、治療を行います。詳細は、「肺循環科」をご覧ください。

この記事をお読み頂いた患者さん、そのご家族の方へ

もし慢性血栓塞栓性肺高血圧症という耳慣れない病名に戸惑いこの記事に辿り着いた方、例えば病院でこの病気の疑いがあることを医師に告げられた患者さんやそのご家族であったなら、きっと驚かれたり、不安な状況かもしれません。

私も患者の家族として同様の驚きや不安を感じた者の一人です。

患者さんによって受けられる治療や回復・病気の進行状況は異なりますので、一概に言えませんが、少なくとも我が家では記事内で示した症状の進行について「右心不全」を通り越して「左心まで圧迫した」危険な状況から治療をスタートして現在では投薬と定期健診のみで通常の生活を送っている妻と平穏な日々を過ごしています。

患者さんには不安になるなと言うのは酷かもしれませんが、同様の立場としてどうかご家族の方は冷静にご家族を支えるよう応援しております。是非、現状に悲観せず未来に向かって進んで欲しいとエールを送るとともに一日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。

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-慢性血栓塞栓性肺高血圧症

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