添乗員として失敗は数知れず。
その中でもとっても悔しい思い出があります。
高級ホテル・アイランド・シャングリラからの香港の夜景は私には曇って見えました。
そしてセミスイートで食べたルームサービスの食事と一緒に苦い思いを噛みしめていました。
今回の記事はHaruがご案内いたします。
目次
添乗員にとっての「接遇」とは?
接遇で一世を風靡したこの方
「エチカの鏡」というテレビ番組でブレイクした、この方、平林都女史をご存知でしょうか?
企業のマナー研修をする講師の方です。
超スパルタ教育で受講中に泣き出してしまう受講生が続出するような激しい口調がテレビで受けたようですね。
私はあの人の顔が怖かった。
接遇では笑顔が大事だと説いて、「口角を上げる!」と自ら歯をニッて見せた顔をやってみせますが、口が笑っているのに、目が笑っていない。
こういう顔…、結構怖いです。
私は「作らなくても内面からにじみ出ているような笑顔」が好きですね。
「接遇」との出会い
さて、私が「接遇」という言葉と出会ったのは、この「接遇おばさん」ではなく、旅行会社の営業マンをしている時代でした。
私が勤務していた旅行会社は経済視察団とか国会議員の訪問団といったいわゆるVIPを対象したツアーを多く手掛けていました。
ですから要所要所で「それなりの対応」をすることを求められます。
私も総理大臣経験者の方を成田空港でお見送りするときのスタッフとして参加した経験がありますが、それはもう大騒ぎです。
さて、このようなVIPが旅行に出掛けるときにおさえるべきサービスとして、「接遇」がありました。
私はこの手の仕事があまり好きではありませんでしたが、仕事ですから仕方ありません。
成田空港での航空会社の「接遇専門担当」
私たちのなかで「接遇」とは、成田空港でのお世話一切を空港関係者、航空会社に依頼して、「不快感なくご出発頂くためのサービス」でした。
航空会社の接遇係りの様な人たちがいて国会議員の団体の場合などは、接遇係りの「お偉い方」が出てきます。
髪の毛なんか油でばっちり固めたような…。
前泊ホテルのスイートルームをおさえ、
「私は、朝食は〇〇のヨーグルトじゃないと嫌なの」
と、言われれば、そのヨーグルトをルームサービスで提供できるように手配します。
空港のチェックイン手続き中などは、くつろげる「VIPルーム」という名のラウンジを用意し、おビールで乾杯して壮行会が開催されたりします。
(VIPルームなんてネーミング、よく気恥ずかしくないなぁって思っちゃいます)
(^_^;)
取り合いになるVIPルーム
今はどうか知りませんが、私が旅行会社に勤務していた頃は、VIPルームの取り合いということが良くありました。
VIPルームは数が少なく特に大人数の入る部屋は少なかったのです。
大型のVIPツアーがかち合っちゃうと大変なんです。
そこで如何に早くスケジュールを決定し、この様な施設を「おさえ」にかかるのかも重要な仕事だったりしました。
会社で言ったら「総務部」の方々はこういうの、得意かもしれませんね。
イミグレーションだってVIPは別ルート
また、場合によっては、イミグレーション(出国手続き)も「便宜供与」という名の「特別扱い」を手配しなければなりません。
これらは確か外務省で認められるランキングみたいなのがあったと記憶してます。
ちょっと良くは覚えていませんが、国会議員でも「大臣経験者」が同行する団体だと「あり」だとか、企業のVIPなら一部上場企業の「代表取締役」なら「あり」だとかそんなんじゃなかったかと…。
飛行機に乗るまで、「一般ピープル」とは全く別ルートで行けるように手配されます。
イミグレーションでは「一般ピープル」の私たちは(添乗員だって例外ではないのはもちろん)、行列に並んで(ゲッ!あっちの列の方が早かった!)なんて思いながら、我慢しますが、VIPにはそんなストレスは感じさせてはならないのです。
日本のVIPが海外でも特別扱いされるために
さて、日本国内では航空会社を始めとして関連各所と私たちも通常からお付き合いしています。
ですから、それぞれの方々も「そそうがあっては大変だ」とそれなりに、協力的に対応してくれますが、海外ではそうもいきません。
当然、しかるべき人的ルートを駆使して、海外でも「特別扱い」してもらうべく根回しをするわけですが…。
私はこのようなケースで苦い経験があります。
私が担当したVIP団体旅行
経済視察団という名のVIP集団
初めて経済視察団の添乗を一人で任された時の話です。
参加者は世界でも名だたるような有名企業の副社長、冠つき取締役クラスです。
飛行機の数少ないファーストクラスをどうやって序列を決めてビジネスクラスに振り分けるか?
とても悩ましい問題だったりしてしまう人たちです。
訪問団の団長は有名な建機メーカーの会長でした。
「ディビエーター」という添乗員泣かせ
訪問団は各界の要人で多忙な方が多いです。
ですから経済視察団の全行程を参加できる参加者は少ないのです。
- 2日目の午後に入国して途中から訪問団に合流する人
- 3日目に現地法人に用事を済ませるため、別手配の車に乗って夕食に合流する人
- 4日目の早朝便で帰国する人
- 観光は一切付き合わない人
みたいに別行動する人がやたらといます。
私たちはこういう人たちのことを「ディビエーター」略して「ディビ」なんて呼んでいました。
私は旅行期間中、全員のパスポートを持たなければならず、万一、4日目の早朝便の帰国する人のパスポートを渡しそびれて空港に行かれてしまったりしたら大変なことになりますので気の休まる暇はありません。
訪問団特有の存在「主催者事務局」
通常は訪問団には主催者の事務局の方々がいます。
ですから一般の観光ツアーの様にツアーの全工程を添乗員が段取りするわけではありません。
例えば、どこかの企業訪問を主催者側が準備していれば、当日の段取りも事務局の方々が仕切ります。
このツアーにも主催者事務局として何名も同行ししていました。
事務局の方々の仕事
事務局の方々は一般の観光ツアーとは異なる様々な仕事を旅行中にしています。
昼間視察した時の議事録を徹夜に近い状態で作成して翌朝に団員の皆様に配布する、なんていうことをしています。
会社に帰ってわざわざ報告書なんて作らなくてもいいようにして「差し上げる」わけです。
添乗員の立ち位置は?
私たち旅行会社にとって、この主催者の皆様はお得意様です。
いくら「旅行と関係ないから」といって、旅程が終了したら、
「それではお疲れ様でした!」
と言って添乗員だけ寝るわけにはいきません。
結局は寝ないでワープロのお手伝いとか資料を印刷するためホテルのビジネスセンターを何往復もしたり、ホチキスでパチパチやったりするわけです。
ほとんど眠れないので意識がもうろうとしてきます。
芽生える連帯感
それでも、私もこの事務局スタッフと一緒に仕事をするうちに連帯感が芽生え、何となく和気藹々とした雰囲気に溶け込めて嬉しかったりもしました。
さて、1週間程度の中国の視察や表敬訪問の全行程をほぼ終えて、
「後は明日、香港に出国、1泊して帰国」
というところまで、大過なく終盤を迎えました。
中国から香港への関所
中国の最終宿泊地は広東省、深圳(シンセン)というところでした。
バスで移動する香港行き
翌日はバスで移動します。
まだ当時は香港は中国に返還されておらずイギリス領でしたのでイミグレーション(出入国審査)を通過しなければなりません。
以下のサイトにて詳しくご紹介されていました。
VIP御一行様香港行き
「一般ピープル」は、バスで高速道路の料金所に毛が生えたような建物を通過するときに出入国審査を受けます。
全員パスポートと出入国手続きの書類を持って下車して一人づつチェックを受けます。
でもVIPにはそんなことはさせません。
団長、副団長は、黒塗りのベンツ、他の団員の皆々様は、
バスから降りることなく、イミグレーションを通過させなければなりません。
この時にトラブルは発生しました。