難病指定の補助金 法制化でどう変わる? そして「我が家の場合」

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お伝えしてきたとおり、私の妻は『慢性血栓塞栓性肺高血圧症』という病気を患っております。

この病気は国の難病指定になっており我が家はその医療費の多くを東京都と健康保険組合から補助して頂いております。

この『難病医療費助成制度』に関しての法案が国会で提出されました。

この記事は執筆者Haruが運営するブログ「はるのたわごと」の引っ越しを目的に2014年4月27日に投稿した記事をリライトして当サイトに転載したものです。記事の時系列も初投稿時のままにしておりますのでご了承下さい。

『難病の医療助成』が「法改正」ではなく「法制化」である理由

2013年の秋くらいから議論が本格化していたこの法案。

実は従来の『難病の医療費助成』は法律ではなく、1972年に策定された『難病対策要綱』に基づいて実施されてきた経緯があります。

ですから『法改正』ではなく『法制化』なんですね。

法制化における3つのポイント

  1. 対象疾患の拡大
  2. 医療費助成対象の明確化
  3. 患者の負担割合の引き下げ

対象疾患の拡大

3,000以上ともいわれる難病のなかで従来、医療費助成の対象となる難病は56でした。

不幸中の幸いですが、妻の病気はこの56の難病のひとつでした。

ですから非常に高額の医療を受けているにもかかわらず家計を圧迫せずに済んでいるのです。

妻の病気でかかる医療費の一例

ひとつの例をご紹介したいと思います。

妻が日々治療で服用している薬は、1日2回服用の1粒5千円のものと1日3回服用の1粒千円のものがあります。

これを毎日飲み続けていますので、保険も助成もなければこれだけで1ヶ月の薬代は39万円にもなります。

もしかしたら死ぬまで飲み続けなければならないかもしれません。

手厚い医療制度や助成制度がなければ我が家の家計はあっという間に破綻してしまいます。

助成対象になるかどうかは当事者にとっては切実な問題

我が家は難病指定による助成対象になっていますが、助成対象外の難病と向き合っている方々の中には高額な医療費を通常の健康保険の範囲で自己負担を強いられている方も多いのではないかと思います。

そういう意味では罹患している病気が助成対象の難病指定になるかどうかは文字通り死活問題ではないかと思います。

闘病で生死の問題に直面し、経済上の問題で死活問題に直面する。

大変厳しい状況の中での闘病生活を拝察するところであります。

今回の法制化により従来の56の対象疾患が約300に拡大されるということです。

以前から助成対象をどのように広げていくかが課題であったことから、一歩前進といえると思います。

医療費助成対象の明確化

従来の助成対象に明確な規定はないため、「何故この病気が助成対象にならないのか?」ということも良くわからないまま過ごさなければなりませんでした。

今回の法制化にあたって助成対象の基準が設けられます。

  • 患者数が人口の0.1%程度以下
  • 原因不明
  • 治療法が確立されていない
  • 生活面への長期の支障

原因不明で治療法が確立されていないと、最先端医療を受ける必要があったり、開発中もしくは開発途上であるような新薬の投与を続けるなど、医療費の負担が多くなる可能性が高まります。

また生活面への支障があると就労などに障壁があったりします。

それが経済的な負担の増加にもつながってくることも多いでしょう。

妻の病気はまさにこれらのどれにもあてはまっています。

『慢性血栓塞栓性肺高血圧症』という病気は、2010年度には日本に1,288名しかしないということでした。

2018年10月追記

2013年には2,140名に増加しています。

その原因もはっきりわかっていませんし、治療法も確立されていません。

現在、妻が行っているバルーンカテーテル手術もまだ歴史の浅い治療法で、術後の長い経過に対する実例が存在していません。

しかもその手術をできる病院は日本でホントに数えるほどしかないため、常にこの手術を待っている患者さんがいるようです。

また在宅酸素療法は常にチューブを鼻に通していなければならず、生活面での支障もあります。

外出時には携帯用の酸素ボンベを持ち歩かなければならず、だいたい1本のボンベで9時間程度と時間制限があり行動範囲を限定されます。

そのため就労の業種や職種が限定される面が否めません。

患者の負担割合の引き下げ

現行の患者の負担割合は3割ですが、新制度では2割になります。

ただし自己負担額には『限度額』があります。

ちょっと分りにくいですが、「限度額以下で負担する場合の負担割合が下がる」、ということです。

自己負担限度額の詳細は後述しますが、例えば限度額が1万円の人が2万円の医療費がかかった場合、

従来なら…

2万円×3割=6千円

ですが、

新制度では、

2万円×2割=4千円

と言う様に自己負担額が減るということです。

法制化における3つのポイントをご説明してきましたが、実は今回の改正では4つ目のポイントがあります。

それは自己負担限度額の見直しです。

自己負担限度額の見直し

従来も所得に応じて自己負担額が設定されていましたが、見直しにより自己負担額は増える方向です。

従来の自己負担額上限

現行の難病患者の自己負担額の上限は以下の表の通りです。


※画像をクリックすると拡大した表が見られます

まず入院と外来等の区分があり上限額が異なります。

また上の表でAは患者本人が主な生計維持者でない場合、Bは主な生計維持者の場合です。

生計維持者が患者になった場合は、それ以外の場合の半額となっており自己負担が抑えられています。

収入の区分は7区分となっており、年収が402万円からは年収がいくらでも一緒です。

但し生活保護者や重症患者の方は自己負担はありません。

これが新制度ではどうなるのか?

新制度の自己負担額上限

以下の表の様になります。


※画像をクリックすると拡大した表が見られます

新旧の上限額の違い

生活保護受給者が自己負担なしという点は変更がありません。

しかしながらそれ以外の区分が従来とは異なります。

まず、『入院』と『外来』といった区分は無くなります

また、『人工呼吸器等装着者』という区分ができて、自己負担は1,000円となります。

従来、自己負担額が無かった重症患者は収入によって自己負担額が発生します。

年収の区分には『市町村民税非課税世帯』と『それ以外』に分けられた上で、『それ以外』は全部で3区分となります。

既存の認定患者とこれから認定される患者に違いがあります。

既存の認定患者への配慮として3年間の経過措置として負担軽減が図られています。

既存の認定患者の方にとっても3年が経過すると『新規の認定患者』と同様の基準が適用されますので、上の表でも『新規の認定患者』の区分で現行と比較するのが良いでしょう。

新制度では『入院』と『外来等』という『治療法』の区分が無くなった代わりに『高度かつ長期』という『症状』についての区分ができました

そうすると全体としては上限額が上がっている印象がありますが、状況によって新制度による影響がどうなるかは異なるようです。

患者が一家の大黒柱なのかどうか、それとも家族なのか、治療法が入院なのか通院なのか、重症なのかどうか、『高額かつ長期』の治療なのか…。

我が家の例で見てみましょう。

そして我が家はこうなった

現行の我が家の自己負担額の上限

まず『現行』では、『治療法』は『入院』も『外来』も対象となっています。

検査入院と手術での入院も経験しています。

現在は自宅療養で検査と薬代が外来としてかかっています。

患者は専業主婦である妻なのでAの『患者本人が生計維持者以外の場合』に該当します。

年収区分は一番下の区分に該当します。

我が家の自己負担額は以下の様になります。

  • 入院にかかる医療費
    月額23,100円
  • 外来にかかる医療費
    月額11,550円

次に『新制度』ではどうなるでしょう。

新制度での我が家の自己負担額の上限

既に認定を受けていますので、3年間は『既存の認定患者』の区分に該当します。

重症患者ではありませんので、『一般』となります。

年収に関しては基準について詳細を調べ切れていません※が、言葉通り『年収』ととらえると、私の場合は不動産収入もありますので、一番下の区分に該当すると思われます。

※収入なのか、所得なのかがはっきりわかっていないため

従って、一番下の区分となり月額20,000円が適用されます。

入院と外来の区別はありません。

以下の図の赤い細い矢印の様になります。


※画像をクリックすると拡大した表が見られます

  • 入院の場合
    23,100円⇒20,000円
    3,100円ほど減額されます。
  • 外来の場合
    11,550円⇒20,000円
    8,450円ほど増額されます。

更に、経過措置が適用される3年間を過ぎるとどうなるでしょうか?

経過措置が終わる3年後の上限額

『高額かつ長期』の定義はどんなものでしょうか?

『1ヶ月の医療費総額が5万円超の月が年6回以上ある重症患者』ということです。

もし妻の治療が3年後も現状の様に続いていれば、急激な医薬品の値段が下がらないと『1ヶ月の医療費総額が5万円超の月が年6回以上』は簡単に超えてしまうでしょう。

ただ『重症患者』の定義がわからないので、現行で『重症患者』の適用がないことから『一般』に該当するものとします。

そうすると私の年収に変化が無ければ、3年経過後は月額30,000円となります。

図の太い矢印『⇒』の様に、経過措置前と比較すると10,000円の増額です。

現行から比較すると以下の様になります。

  • 入院の場合
    23,100円⇒30,000円
    6,900円ほど増額されます。
  • 外来の場合
    11,550円⇒30,000円
    18,450円ほど増額されます。
実は我が家では難病の助成金の申請等は妻が行っています。

実際にこの法律の施行後に妻が詳細の記事を書いていますので、そちらも参考にしてみて下さい。

今後のスケジュールと環境整備について

〔新制度の助成開始:既存認定疾患と新規疾患の一部〕
 ⇒ 2015年1月

〔全面実施の開始〕
 ⇒ 2015年夏

法案が成立したら厚生労働省は第三者委員会を作って助成対象疾患や患者の基準を決めます。

また環境整備もなされる予定です。

都道府県に原則1ヶ所以上の『難病医療拠点病院』を指定して、複数の『難病医療コーディネーター』が配置される、ということです。

更に地域で適切な利用を受けられるようにするために、『二次医療圏』(複数の市町単位)に1ヶ所程度の『難病医療地域基幹病院』を指定する見込みです。

詳しくは難病情報センターの公式サイトにて確認できます。

2018年10月追記

2015年制度開始当時には対象疾病が110疾病だったのが、徐々に増えて2018年4月現在では331疾病になっています。
更に東京都では8疾病を国の制度とは別に医療費助成の対象としています。

詳しくは以下のサイトをご確認下さい。

助成金について思うこと

今回の法整備は難病患者の助けになる大きな前進

今回の法整備によってどう変わるかは患者さんの置かれた状況によって様々です。

我が家のように負担増になる家計も存在すますし、今回の法整備でも対象疾患にならずに経済的に厳しい状況が続く家庭も存在します。

闘病する家庭の負担を軽減できない点では諸手を挙げて歓迎できるかどうかは微妙かもしれません。

それでも対象疾患が格段に拡大されたことは大きな一歩だと思うのです。

基本的な考え方は理にかなっている

例えば重症患者の自己負担額が無かったものが所得に応じて増えてしまいます。

しかし経済的な負担だけ見れば病気の内容よりも自己負担額の家計に占める割合の方が切実だと思います。

確かにここで論じられている助成対象になる『医療費』以外にも病気と付き合うためには、いろいろな費用が発生したり『得られたであろう収入』が減ってしまうなどその経済的影響は、ここで論じられている自己負担額に集約される点だけではないですが、最も切実な点は対象疾患を増やすことだと思うのです。

確かに年収160万円の家計にとってゼロか5,000円は年間で6万円の差です。

3年後には1万円になりますから年間で12万円を捻出しなければならないのは大きな負担です。

ずっと続けなければならない治療なら20年なら240万円となります。

でもそれは重症患者でもそうでなくても辛さは一緒です。

もちろん、誰もが負担増を強いられず対象疾患が増えるのが最も良いのかもしれませんが、財源などの点が考慮され、対象疾患拡大との兼ね合いで選択されたのなら、私は悪い選択ではないと思います。

先にも述べた通り、助成対象にならない費用がどれだけ多くかかるのかは、病気によって違うかもしれないので一概に言えません。

しかしながら「収入」と「かかる費用」に着目して自己負担が決められていくという基本的な考え方と対象疾患が増えたことは最も良い点だと思います。

限られた財源を必要度の高い人に分配するために

できることなら、もう1歩進めて、収入基準だけではなく保有資産基準というのも設けてもらえるともっと良いと思います。

貯金が1億円あって収入がほとんどない人に手厚く助成するよりも対象疾患を拡大する方がはるかに急務だと思うからです。

誰もが困っている人を助けたい、それは同じだと思います。

でも常に財源を確保するという命題とセットでなければならないとしたら、保有資産基準という観点も導入して欲しいと思います。

公的制度で収入に準じた基準が採用される理由

公的助成制度では助成対象者を選別する際にその多くで所得基準が用いられるのは数値を把握しやすいという最大のメリットがあるからだと思います。

源泉徴収・年末調整・確定申告等、個人の収入に伴う税金の徴収を目的に行政の制度は確立されています。

その反面、個人の保有資産の把握は通常は固定資産税の対象資産に限定されています。

全財産を行政が把握できるのは相続が発生する「死亡時」だけです。

例えば預貯金や不動産を把握していたとしても、金融資産、もっと細かな美術品、骨とう品の類、そんなものを行政が把握するなんて難しいです。

また、それらの資産の正確な『時価』を判定することも難しいでしょう。

ただ、限られた財源を『不足している人々に行きわたらせるため』には、従来よりも踏み込んで検討できないか?

そう考えることがあります。

なってみると切実さを実感する「命をつなぎとめるお金」について

難病かどうかに関わらず医療にかかる費用というのは家庭への影響が非常に大きい事柄です。

家族が病気と付き合っていくためにはとても重要な要素です。

家族が病気になってしまうだけでも家族みんなにとって悲しかったり不安だったりするものです。

日本では『お金にまつわる話』をすることは声をひそめないといけない風潮がありますが、せめて『わからないことからくる経済的な不安』の解消の一助になればと思い今回は助成金についてとそれにまつわる私見も書かせて頂きました。

この記事は執筆者Haruが運営するブログ「はるのたわごと」の引っ越しを目的に2014年4月27日に投稿した記事をリライトして当サイトに転載したものです。記事の時系列も初投稿時のままにしておりますのでご了承下さい。

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-慢性血栓塞栓性肺高血圧症

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